iStrategyCRM 営業力強化する問題解決型SFA/CRMソリューション

成長戦略プロフェッショナル

1.  成長か衰退か

一つだけ確かなことは、企業は成長しなければ衰退するということです。顧客(消費者)の嗜好は日々変わり、サプライヤーの豊富な、変化の激しいこの時代において、企業成長の源泉はどこにあるのでしょうか?サービス経済や知識経済、付加価値などの言葉が溢れるように囁かれる一方で、それが最終的な解決策となる場合はあまり多くありません。少しだけ改良された製品(サービス)や、少しだけ価格の低い戦略では効果はなく、また市場を独占できるほどの発明的な製品が開発されることはごく稀です。何らかの対応策や、新しい手法を取り入れるだけで変革と高利益率がもたらされるのであれば、競合企業も同様の施策をとるでしょう。個体として考えれば劇的だった変化も、自然界の中で考えればわずかな違いにしか過ぎず、大きかったはずの優位性は直ちに失われてしまいます。

持続的成長を成し遂げるには、営業(セールス)、競争、製品、価格といった企業における基本概念を再考する必要があります。これはイノベーションとも言うべき大きな経営改革ですが、決して困難なことではありません。企業を取り巻く利害対立をできるだけ解消し、社内の能力を顧客の望むものに集中する「顧客コラボレート」が成長をもたらします。

今までにも、従来型の強引な精神論による営業を合理的なものに変えようという試みは多々ありましたが、合理性という方針が先行するあまり、部分的なアイデアに留り、手段の目的化を招く懸念がありました。重要なことは、方法やツールだけではなく経営方針や考え方にあると言えるでしょう。



2.  優秀な社員を殺す方法

優秀な社員とは、企業と顧客両者の発展をもたらす能力のある人物のことです。また、社員には二つの種類があり、一つは「発展をもたらすために必死に考え、努力を惜しまず、結果に責任を取るタイプ」、もう一つは「言われたことには逆らわないが、責任も回避するタイプ」です。(もちろん、本来は固定的ではなく二元的ではありません)この前者の優秀な社員を、後者のそれなりの社員にしてしまうのは企業における最大の損失であるにもかかわらず、その原因を自ら作り出している企業が日本には数多くあります。

一つは、誠意や熱意をもってお客様のもとへ日参することが最も大切だという営業の美学です。また他には、お客様は神様であるという誰もよく分からない信仰もあります。確かに、このような精神論主義は、高度経済成長においては有効であった可能性があります。それは、顧客企業の成長がほぼ約束された中では、足繁く通う熱心さが権力にすりよる最も効果的な方法だからです。使う予算がまず存在し、その予算をどの相手に対して支払うのかを決定するプロセスと権限というものが存在したわけです。しかし、競争が当たり前となった現在において、ただ頻繁に来てくれるからという理由で業者を選ぶと、その企業の競争力は低下してしまいます。また、頻繁に通う方も、旧知の仲になるために値引きや付加サービスが恒常化してしまい、自社の成長はままなりません。お客様は誠意を受けたいと思っているという勘違いや、熱心に努力をすれば分かって頂けるという的はずれな信念は成長に結びつくことはありません。

優秀な人間がかつての成功体験や慣習を壊すパワーを持っていたとしても、押しつけられる精神論と官僚的な権限構造が作り上げたシステムによって、簡単にそのパワーを殺がれてしまいます。生産現場で効率化が進んでも、営業の現場では非効率が改善されず、利益低下を招く企業の将来は決して明るいものではないでしょう。

これらの因習をどう扱うべきでしょうか。



3.  利害の対立が陳腐化を招く

長い間ビジネスの形態として信じられてきた、「お客様に対して商品・サービスを提供し、その対価を受け取る」という伝統的な(かつ単純な)モデルの問題点は、常に利害の対立が存在するという事です。いくら優れたサービスに合理的な生産・販売体制を取り入れたとしても、受け取る価格がその商品・サービスの対価として位置づけられる限り双方の思惑は対立したままです。

例えば、システム開発では導入効果をもとに開発内容が決定されますが、そのプロセスにおいて価格と開発内容についての利害対立が自然発生します。システムベンダーは開発内容に基づいて工期や人員配置を決定しますが、そのプロジェクトに取りかかった時点から「コスト増(工数増)につながる問題を避ける」防衛本能が働きます。価格を一定とした場合、工数の増加はコスト増であり、すなわち利益率を低くしてしまうため、要求以外の新たな問題を発見した場合でもやり過ごす危険性があります。一方で顧客側は、納品されるまで不確定な導入効果には不安があり、その不安を解消するために「同じ価格でより多くのメリットを得ておこう」とするか、「価格の引き下げ」を求める場合もあります。本来は顧客の課題を解決するはずだったプロジェクトは、その効果を最大化する以前に無難なものにする(陳腐化)プロセスを経ることになります。

システム開発企業に限らず、朝食シリアルメーカーや事務機器販売においても同様の対立が存在します。どこかが間違っているわけでない以前からの商習慣にもかかわらず、当然のように利害対立が生まれ、付加サービスの要求や値引きが恒常化するゆえに低い利益率をもたらし、企業の成長は阻害されることになります。

では、どうすれば自社の利益率を高め、顧客満足を最大化することができるのでしょうか。その鍵が「顧客コラボレート」という概念です。



4.  顧客コラボレート

「顧客コラボレート」というのは、簡単に言えば「顧客と利害を一致させる」経営手法であり、コンセプト(考え方)です。顧客との取引関係だけを考えてしまえば必ず利害のトレードオフが生じますが、顧客が望んでいるものは取引そのものではなく取引の結果から得られる効果のはずです。先のシステム開発では価格と開発内容の対立がありましたが、システム開発会社・顧客の双方共に望んでいるのはシステム導入効果です。そこで、10億円のシステム導入効果(業務改善効果)だった場合、その効果をあえて20億円と設定してプロジェクトを進行することによって、双方の利害は一致します。もちろん単純に目標値を上方修正するだけではなく、10億円の導入効果を基本数値としてそれを上回るパフォーマンスに対しては変動オプションとする等のインセンティブによって、双方の利益を追求する顧客コラボレートの実現が可能になります。自社を、顧客から見た取引相手・コスト要因と位置づけられる状態から、社内の部署として同じ目的を共有するパートナーとして両者の利益を確保することができるのです。

つまり、「顧客の顧客が自社の顧客でもある」という理念のもとで、価格・コストといった従来からの固定的な概念を捨て、同じ目標を持つことによって高いパフォーマンスを達成するわけです。買い手、売り手といった役割や、コスト+利益=価格という発想から抜け出して、最終的には「顧客が自ら払いたくなる」状況を作り出し、高い利益率と確実な企業成長がもたらされるのです。

ピーター・F・ドラッガーも「明日を支配するもの」で、このように指摘しています。『企業のほとんどが、コストからスタートし、それに利益幅を載せて価格を決めるというコスト主導型の価格設定を行ってきた。これに対し価格主導型のコスト管理では、顧客が進んで支払う価格を設定し、商品の設計段階からアフターサービスに至るまでの許容されるコストを明らかにする。』

朝食シリアルメーカーであれば、シリアルをスーパーの店頭で購入することを超えた朝食の光景を思い浮かべる時に、また事務機器であればオフィスでの利用シーンを考える時、それぞれのプロフェッショナルとしての知見が存在するはずです。その知見を顧客に提供することで、利益率を向上させる新しい時代におけるビジネスの方法が生まれることになります。

重要なことは、そのためには顧客の事業(消費者の場合は生活)に対する深い理解がポイントになります。朝食を誰とどんなテーブルや食器で食べるのか、システムの導入効果によって生産リードタイムや棚卸資産、在庫圧縮がどのくらい可能で、製品にはどんな影響があるのかを理解しなければならず、さらには、ひとりひとりの顧客についてもどのような個別の問題を抱えているのか把握する必要があるでしょう。その上で、顧客が競争力を増し、顧客の顧客に支持される企業になることで自社の利益率を向上させる、これが顧客コラボレートというコンセプトです。



5.  競争とは何か?

従来から競争とは、コストリーダーシップや差別化、集中などの戦略(方法論)がありました。もちろんこれら分析は有効なものですが、改めて考えてみると競争条件が固定的であることに気が付きます。つまり、同様の嗜好の顧客(消費者)が存在するということが所与の条件となっています。

ワインの販売業者であれば、高級ワインかテーブルワインか選択し、さらに高級ワインを木の箱に入れて差別化する、またはテーブルワインをより低い価格で提供する、原料を変えて差別化する、ポート、シェリー、スプマンテなどの種類を豊富に取りそろえること等々によって、競争優位を獲得する思考を辿ります。これらはいずれもワインを買いに来た人々に対して、いかに自社のワインを選択させるかという試みに過ぎません。既にワインの販売という定義があるために、厳しい競争を勝ち抜かなければならなくなったわけです。しかし、そもそも同じルールの競争に参加するかどうかの選択は何時したのでしょうか。おそらく「競争をしない」選択ができれば、それが最も賢明でしょう。つまり新たな消費者に対してワインを提供することで、既存のワインとの比較ではない状態を作り出すことが出来ます。例えば、ワインを飲まなかった人、ビールやカクテルを飲んでいた人など、創造するべき市場は多くあり、実際に飲みやすいフルーティなワイン(本当は、何年もののワインといった深みや、味の微妙な違いは多くの人が分からない)によって新規顧客の心をつかむ企業もあります。

これは、同条件の競争をいかにして避けるかのみならず、レストランで料理と一緒にビールではなくオシャレで美味しいワインを飲みたいという嗜好を満たすものであったわけです。いかにして、市場のパイを奪い合うかという発想から抜け出して、売らないこと、顧客にとってのメリットをゼロベースで考える必要があります。

そのためには、組織として、また経営者は何をするべきでしょうか。経営者の役割はいつでもプラットフォームを整備することです。方針や方向を示すだけでなく、その方針を実現する体制を整備しなければ意識改革や業務改善は起こりません。いくら営業担当者を含む社員を叱咤激励しても、優れた起業家の立身ストーリーを見せても、それは全く意味をもちません。そのプラットフォームが整備されれば、営業担当者は顧客と最も近い距離にいるので、「顧客の抱えている問題・情報の収集」「社内での顧客協力体制の調整」など、その能力を十分に発揮できるようになります。