(3) CRMという言葉
CRMと言う概念をわかりにくくしている最大の問題は、CRMという言葉(用語)にあります。CRMは、Customer Relationship
Management(顧客志向経営)のことで、その本質的な意味はマネジメント・戦略論であるにもかかわらず、ITシステムを指す言葉としても使われているのが実情です。
CRMといわれる場合にはその意味として、
| (A)マネジメント・経営戦略としてのCRM (B)ITシステムとしてのCRM |
| (B-1)データベースやビジネスインテリジェンスなどの「ビジネス分析型」 (B-2)営業支援、コールセンターなど業務に利用する「ビジネスツール型」 (B-3)メールや携帯を利用した「コミュニケーション目的型」 |
ITベンダー自身もこれらの分類を明確にせずに使用するため、あらゆるものがCRMとして扱われていますが、本来のCRMは経営戦略でありマネジメントの分野です。マネジメントを基本とせずに、ツールだけをCRMと考えてしまうところに、CRMの効果を測定する際の本質的な問題があります。
顧客との関係性を最適化することによって、組織のあり方を変え、戦略を実現し、さらには数値としての利益率や収益性を向上させることが本来の目的です。しかし、マネジメントを抜きにして、単にITツールを導入するだけで自動的に企業価値が向上することはありません。それは、握手や挨拶をするだけで相手との信頼関係を築こうとしているような事であって、やはり会話や考え方を理解して初めて信頼を得ることができるはずです。
(4) CRMの目的は経営戦略の実行であり、業績向上である
マネジメント抜きのCRMは存在しません。では、CRMが顧客志向・顧客関係重視の経営を実現することで業績向上をもたらすのはなぜでしょうか?
一般的に、新規顧客の獲得にかかるコストは既存顧客の維持にかかるコストの5倍程度といわれています。このため、今の顧客を大切にして離反を防ぐことが戦略上重要だというのが、CRMが注目されている背景です。
全ての顧客の満足度を常に高いレベルで維持できれば、企業に収益性や成長性がもたらされるのは容易に想像が付きます。製品やサービスを購入した顧客が満足をしていれば、次の購入時にもその企業から購入するでしょうし、他社に比べて高い価格でも受け入れられることによって利益率も向上します。しかし、これは理想的な状況であって、現実には不満を持つ顧客もいれば、他社との競合関係も存在します。また、全ての顧客の満足度を高めようとすると、それ自体がコストをかさ上げして利益率を低下させてしまう危険性もあります。
どの顧客の満足度を向上させれば収益性が向上するのかは、業種や製品・サービスによって違ってきます。たとえば、貴金属や自動車など高価なものは、満足度の高い顧客へさらに満足度を高める戦略をとることで収益性が高まります。逆に一般向けに幅広く提供される製品・サービスの場合は不満客に対する投資を考える必要があるでしょう。
このように、マネジメント・経営戦略上の目的を明確にした上で、その実行手段としてCRMを用いて業績向上を行うことが重要です。
(5) システムとしてのCRM
CRMは、顧客(消費者)との接点を最適化し、営業活動、ニーズを製品・サービスに反映させるなど企業活動のフロント部分を担うソリューションです。社内コミュニケーションだけでは、収益向上などの成長に直接繋がりません。経営戦略と業務システムを統合し、知的活動を支援するシステムが企業成長と収益向上をもたらす基盤となります。
これまで個々の社員やセールス担当者が持っていた情報やスキルを共有することで、より直接的に顧客との関係を強化し、売上を拡大することができるようになります。
例えば、担当者が変わったりしても、会社として顧客に一貫した対応をすることが可能で、高い顧客満足度(ロイヤリティ)の構築を可能にします。
また、ある顧客が購入の際に重視するポイントや、前回の取引からの経過期間、また優秀な社員の行動分析、自社の売上をもたらす取引先の構成など、企業の成長に繋がるデータの多くは顧客からもたらされます。また、以前に起こったトラブルや顧客からの問い合わせなどの情報は企業内で製品サービスへ反映されたり、顧客サポートを向上させます。CRMは、企業の知識となり、サービスの品質を上げ、競争力を強化することを可能にします。